ALP(アルカリホスファターゼ)は、主に肝臓・胆道と骨の状態を映す酵素です。大人で高いときは胆汁の流れや骨の代謝、低いときは栄養状態や薬、甲状腺の働きなどが関わり、成長期の子どもでは高めの値が自然なこともあります。日本では2020年4月から測り方が順次変わり、数値が以前の約3分の1になったため、古い健診結果と比べるときは注意が必要です。
ALPは何を表す数値か
ALPは、リン酸がついた物質からリン酸を切り離す酵素です。肝臓や胆管、骨を作る骨芽細胞、小腸、腎臓、妊娠中の胎盤など、体のさまざまな場所にあります。大人の血液に出てくるALPは、主に肝臓・胆道由来のものと骨由来のものです。
肝臓で作られた胆汁は、胆管を通って十二指腸へ流れていきます。この流れが滞ると、肝臓や胆管でALPが多く作られ、血液中に出てきます。骨が盛んに作られている時期にも、骨芽細胞のALPが血液中で増えます。ALPそのものが胆汁を流しているわけではなく、胆汁の流れや骨の作り替えの様子を映す目印です。
検査結果のALPは、出どころの違うALPを合計した数値です。肝臓由来か骨由来かを分けて知りたいときは、医療機関で「ALPアイソザイム」の検査が行われます。
2020年4月から測り方が変わり、数値が約3分の1に
日本では長く、日本臨床化学会(JSCC)が定めた「JSCC法」でALPが測られてきました。これを国際的な「IFCC法」に切り替えることが決まり、2020年4月から、準備の整った施設で順次切り替えが進みました。切り替えの時期は施設によって異なります。
日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲で比べると、次のとおりです。
| 測り方 | 使われた時期 | 成人の基準範囲 |
|---|---|---|
| JSCC法 | 2020年3月まで(施設によっては2021年ごろまで) | 106〜322 U/L |
| IFCC法 | 2020年4月から施設ごとに順次 | 38〜113 U/L(男女共通) |
切り替えの理由の一つは、JSCC法が小腸由来のALPに強く反応し、血液型がB型・O型で「分泌型」と呼ばれる体質の人では、病気と関係のない高値が出やすかったことです(脂肪の多い食事の後に目立ちやすいとされます)。
実際の結果を見るときは、次の点を確かめてください。
- 項目名に「ALP(IFCC)」のような表記があるか。表記がなくても、基準範囲の欄が38〜113前後か106〜322前後かで見分けられる
- 切り替え前の結果(基準範囲が106〜322前後のもの)と並べるときは、古い値に0.35を掛けるとおおよその比較ができる(日本臨床化学会が示す目安。小腸由来や胎盤由来のALPが多いとずれる)
- 「以前は200台だったのに急に70台になった」という変化は、体の変化ではなく測り方の変化であることが多い
同じ時期にLD(LDH)もIFCC法に変わりましたが、基準範囲は変わらず、健康な人の値もほぼ同じです(肝臓の病気などでは1〜2割低めに出ることがあります)。
子どもと大人で「高い」の意味が違う
子どもは高めで自然なことが多い
子どもは骨が伸びている最中なので、骨芽細胞由来のALPが多く血液に出ています。乳幼児期や思春期には大人の基準範囲を数倍上回ることも珍しくなく、10代後半にかけて大人の範囲に近づきます。子ども用の基準範囲は年齢・性別ごとに別に作られており、日本では、日本の子どもで作られた範囲を、日本臨床化学会が示す係数でIFCC法の値に読み替えて使えるとされています。
乳幼児では、病気と関係なく一時的にALPが非常に高くなり、数ヶ月で落ち着く「一過性高ALP血症」も知られています。生後8ヶ月から2歳までの健康な子ども316人を調べた米国の研究では、約3%でALPが1,000 U/L(いまの日本の測り方に近い方法での値)を超えていました。判断は小児科の医師に任せてください。
反対に、年齢の割にALPが低い場合は、栄養状態や、まれな遺伝性の病気(後で触れる低ホスファターゼ症)の可能性もあるため、小児科で相談しておくと安心です。
大人でALPが高いときに考えられること
大人で基準範囲を超えているときは、肝臓・胆道側と骨側のどちらから来ているのかを考えます。
胆汁の流れが滞っている
胆石や胆管の炎症、原発性胆汁性胆管炎などの胆管の病気、肝臓の病気や腫瘍、服用している薬の影響などで胆汁の流れが滞ると、ALPが上がります。このときはγ-GTPも一緒に上がることが多く、総ビリルビンが上がることもあります。
骨の作り替えが活発になっている
骨折のあとの回復期のほか、副甲状腺や甲状腺の働きが強すぎる状態、慢性腎臓病、がんの骨への転移、ビタミンDの不足が長く続いて骨の石灰化がうまく進まない状態などでも、骨由来のALPが増えることがあります。この場合、γ-GTPは基準範囲内にとどまることが多いのが特徴です。
一時的な要因
妊娠中は週数が進むにつれて胎盤由来のALPが増え、高めになります。胎盤由来のALPはIFCC法で反応しやすく、以前の測り方の値に0.35を掛けた換算値より、実際の値が高めに出ることがあります。B型・O型で分泌型の人の食後の採血も、影響は小さくなりましたが、なくなってはいません。
どの場合も、ALPの数値だけで原因は決められません。基準範囲の何倍にもなっているときや、ほかの項目も一緒に動いているときは、上に挙げた病気がないかを医療機関で確かめてもらう必要があります。
ALPが低いときに考えられること
ALPが基準範囲の下限を下回っても、健診では特に指摘されないことがよくあります。ただ、低い状態が続く理由として、低栄養、ビタミンやミネラルの不足、ホルモンの病気、薬、遺伝性の病気などが挙げられています。
- 食事量やたんぱく質の不足:極端な食事制限や、体重が急に減ったあとに低めになることがあります。
- 亜鉛の不足:ALPは亜鉛を持つ酵素で、亜鉛が足りないと低めになることがあります。ただし日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針2024」では、亜鉛不足でもALPが下がらない人が多いとして、ALPの低値は判断の基準から外されました。亜鉛の状態は、血清亜鉛(早朝空腹時の採血が望ましいとされます)と症状で判断されます。
- マグネシウムの不足:マグネシウムもALPの働きに関わるミネラルで、不足が影響する可能性が指摘されていますが、人での裏付けは限られています。
- 甲状腺の働きの低下:甲状腺の働きが落ちて骨の作り替えが遅くなると、ALPが低めになることがあります(甲状腺(TSH・FT3・FT4))。
- 薬の影響:骨粗しょう症の薬など、骨の作り替えを抑える薬で低めになることがあります。
- 低ホスファターゼ症:ALPを作る遺伝子(ALPL)の変化による遺伝性の病気(国の指定難病)で、骨や歯が弱くなることがあります。重い型はまれで、大人で見つかる型は症状が軽いことが多いとされています。
精密栄養学ではどう見るか
ここからは、医療の基準ではなく、私が血液データを読むときの見方です。
基準範囲の内側の偏りを見る
38〜113 U/Lという基準範囲は、健康な人の多くが収まる幅で、内側なら問題なし、外側ならすぐ病気という線ではありません。私は範囲の内か外かに加えて、下限側と上限側のどちらに寄っているかを見ます。この範囲は男女共通ですが、JCCLSの詳しい表では45歳以上の女性の上限が123 U/L(45歳未満は93 U/L)で、閉経後は骨の作り替えが速まり高めになりやすいため、年齢と性別も踏まえます。
下限に近い値が続いている大人では、食事の量やたんぱく質、亜鉛が足りているかを、食事内容や体調(味覚の変化、肌荒れ、傷がふさがりにくいなど)と合わせて振り返ります。ALPは亜鉛不足の決め手にはならないため、気付くきっかけの一つとしてだけ使い、亜鉛の状態は血清亜鉛の値で確かめます。上限に近い値や、前回より上がってきている値では、肝臓・胆道の項目や、骨に関わる時期・出来事がないかを確かめます。
ほかの項目と組み合わせて読む
出どころが複数あるため、組み合わせで読むと分かることが増えます。
| 一緒に見る項目 | 読み方の例 |
|---|---|
| γ-GTP | ALPと一緒に高めなら肝臓・胆道側を考える。ALPだけ高くγ-GTPが基準範囲内なら、骨側の可能性も考える |
| AST・ALT | ALPより目立って高いときは肝細胞側、ALPのほうが目立つときは胆汁の流れ側を考える |
| 総ビリルビン | ALPと一緒に高いときは、胆汁の流れを優先して医療機関で確かめてもらう |
| TSH・FT4 | ALPが低めで、だるさや冷えが続くときは、甲状腺の項目も医療機関で確かめてもらう |
| 年齢・時期 | 成長期、妊娠中、骨折のあと、閉経後は高めになりやすい |
日常で見直せること
亜鉛とマグネシウムを食事から
亜鉛は、牡蠣などの貝類、レバーや肉、チーズ、ナッツ、ごまなどに多く含まれます。マグネシウムは、海藻、豆類、ナッツ、精製度の低い穀物から摂りやすいミネラルです。必要な量の目安は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に年齢・性別ごとに示されています。
亜鉛は摂りすぎると銅の吸収を妨げるため、サプリメントで補う場合は自己判断で量を増やさず、医師や専門家に相談してください。
胆汁の流れと体重の変化
ここで挙げるのは、ALPを下げるための方法ではなく、胆のうの働きを保つための一般的な工夫です。
胆のうは、脂質を含む食事が入ってくると縮んで胆汁を送り出します。脂質を極端に避ける食事や、食事の間隔が極端に空く生活が続くと、胆汁が送り出される機会が減ります。食事の間隔を空ける方法が合う時期もあるので、体調とデータを見比べて調整するのがよいと私は考えています。
γ-GTPが高めでALPは基準範囲内のときは、飲酒量を見直す価値があります(γ-GTP)。ALPも一緒に高いときは、胆汁の流れが滞っていないかを、先に医療機関で確かめてもらってください。
急な減量や、脂質を極端に減らした減量食では、胆石ができやすくなると報告されています。極端な食事制限はALPが低めになる理由にもなるため、減量はゆるやかに進めるほうが安心です。
検査の受け方をそろえる
1回の値より、同じ条件で測った値の変化のほうが多くを教えてくれます。朝の空腹時に同じ医療機関で受け、妊娠や骨折、服用中の薬なども記録しておくと比べやすくなります。
気になるときは
次のような場合は、早めに医療機関(内科・消化器内科など)で相談してください。
- ALPが基準範囲を大きく超えている、または繰り返し高い
- γ-GTP、AST・ALT、総ビリルビンも一緒に高い
- 皮膚や白目が黄色い、尿の色が濃い、かゆみが続く、右上腹部が痛む
ALPが低い状態が続き、骨の痛みや軽いけがでの骨折、歯が早く抜けるなどがある場合も、内科や内分泌内科で相談すると安心です。
通院中の方や薬を服用中の方は、自己判断で薬をやめたり量を変えたりせず、かかりつけの医師に相談しながら食事や生活を見直していきましょう。