γ-GTPは、お酒の量だけを映す数値ではありません。お酒を飲まない人でも、肝臓に脂肪がたまっているとき、服用している薬の影響を受けているとき、胆汁の流れが滞っているときなどに上がることがあります。反対に、低い値が問題になる場面は多くありませんが、ほかの項目と並べて読むと、生活を振り返るきっかけになることがあります。
γ-GTPは何を表す数値か
γ-GTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ)は、細胞の表面にある酵素です。結果票や医療機関によっては「γ-GT」「GGT」と書かれていますが、同じ項目を指しています。
この酵素の大事な役割は、グルタチオンの再利用です。グルタチオンは体の中で作られる抗酸化物質で、活性酸素を抑えたり、薬や化学物質を体の外へ出しやすい形に変えたりする働きに関わっています。γ-GTPは細胞の外に出たグルタチオンを分解し、その材料であるアミノ酸(特にシステイン)を細胞が取り込み直して、もう一度グルタチオンを作れるようにしています。
γ-GTPは腎臓や膵臓、小腸などにもありますが、血液検査で測る値は主に肝臓と胆道(胆汁の通り道)から出てきたものです。そのため、肝臓の細胞がこの酵素を多く作るようになったときや、胆汁の流れが滞ったときに、血液中の値が上がります。
基準範囲と健診の判定値
日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲では、γ-GTは男性13〜64 U/L、女性9〜32 U/Lとされています。これは健康な人の大部分(中央の95%)が入る範囲として決められたものです。γ-GTは飲酒や体重の影響を受けやすいため、男性の範囲は、BMI 26以上の人と1日25 g以上飲む人を除いたデータから作られています。施設によっては独自の基準範囲を使っていることもあるので、お手元の結果票に書かれた範囲も確かめてください。
一方、特定健診では別の線が使われます。厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」では、51 U/L以上が保健指導判定値、101 U/L以上が受診勧奨判定値です。基準範囲は「健康な人の分布」、判定値は「生活の見直しや受診を勧める目安」と目的が違うため、数字も一致しません。
そのため、男性で51〜64 U/Lの人は、共用基準範囲の内側なのに、健診では保健指導判定値以上とされ、生活習慣の見直しを勧められることがあります。反対に女性では、33〜50 U/Lの値は共用基準範囲の上限を超えていますが、健診の判定では「基準範囲内」に入ります。健診の判定だけでなく、共用基準範囲とも比べてみてください。なお、特定保健指導の対象になるかどうかは、腹囲・BMIと血圧・脂質・血糖・喫煙で決まり、γ-GTPは使われません。
γ-GTPが高いときに考えられること
お酒の影響
一番よく知られているのが飲酒です。アルコールを日常的に飲んでいると、肝臓の細胞がγ-GTPを多く作るようになり、血液中の値が上がります。飲酒による上昇であれば、お酒を控えると数週間かけて下がっていくことが多いとされています。ただし、同じ量を飲んでも上がり方には個人差があり、γ-GTPが範囲内だからといって飲酒量に問題がないとは言い切れません。
お酒を飲まなくても起こる脂肪肝
「お酒はほとんど飲まないのに高い」という場合に、まず考えられるのが肝臓に脂肪がたまった状態(脂肪肝)です。体重や腹囲の増加、中性脂肪や血糖の高さ、食べ過ぎや運動不足と一緒に見られることが多く、ALTの上昇を伴うこともあります。
お酒をあまり飲まない人の脂肪肝は、以前は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれていました。2023年に国際的に名前が見直され、肥満や血糖・血圧・脂質の異常などを伴うものは、日本でも代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と呼ばれるようになっています。健診の資料などでは、以前の呼び方が使われていることもあります。
厚生労働省の健診プログラムでも、γ-GTPの上昇は飲酒の有無にかかわらず、将来の糖尿病や脳・心血管の病気との関連が複数の研究で確認されていると説明されています。健診で見つかった軽い上昇も、生活を振り返るきっかけとして意味があります。
薬やサプリメントの影響
一部の薬は、肝臓で酵素を作る働きを高め、その結果としてγ-GTPが上がることがあります。てんかんの薬など、長く飲み続ける薬で知られている現象です。また、サプリメントや健康食品が肝臓に負担をかける例も報告されています。新しく飲み始めたものがあれば、医療機関で相談するときに伝えてください。
胆汁の流れが滞っているとき
γ-GTPは胆道にも多くある酵素なので、胆石や胆道の炎症などで胆汁の流れが滞ると上がります。このときは、同じく胆汁の流れに反応するALPも一緒に上がることがよくあります。ALPは骨からも出てくる酵素なので、ALPが高いときにγ-GTPも高ければ肝臓・胆道から、γ-GTPがふつうなら骨から来ている可能性を考える手がかりになります。
このほか、ウイルス性肝炎や自己免疫性の肝臓の病気などでも上がることがあります。どれが当てはまるかは数値だけでは分からないため、高い状態が続くときは医療機関で調べてもらう必要があります。
γ-GTPが低いときに考えられること
γ-GTPが基準範囲より低いことが、医学的に問題になる場面は多くありません。お酒を飲まない人や女性は、もともと低めに出やすい傾向があります。結果票に「低」と付いていても、多くの場合、それだけで心配するものではないと考えられます。ほかの項目にも気になる点があるときは、健診を受けた医療機関で確かめてください。
私は精密栄養学の立場から、低めの値そのものより、ほかの項目と重ねたときの傾向を見ています。例えばBUN(尿素窒素)や総たんぱく、アルブミンなども低めにそろっている場合は、食事の量やたんぱく質の摂り方を振り返るきっかけにすることがあります。ただし、γ-GTPが低いことと栄養状態の関係は研究で確かめられたものではなく、これは私の見方です。γ-GTPが低いことだけで栄養が足りないとは言えません。
精密栄養学ではどう見るか
基準範囲の内側の偏りを見る
基準範囲の内側にあっても、値の位置に意味がある可能性を示す研究があります。γ-GTPについては、基準範囲内の値であっても、高めの人ほど何年か後の酸化ストレスや炎症の指標が高かったという研究や、その後の糖尿病や高血圧の発症と関連していたという研究が報告されています。いずれも海外の観察研究で示された関連で、γ-GTPそのものが原因だと分かったわけではありません。研究で使われた「正常範囲」も、日本の共用基準範囲とは異なります。
そこで私は、範囲内であっても上限に近い値や、前回の検査より上がってきた値を、生活を振り返る合図として見ています。これは医療の基準ではなく、精密栄養学の立場からの私の見方です。一回の値だけで判断せず、ご自身の過去の結果と並べて、変化の向きを見ることを大切にしています。
ほかの項目と組み合わせて読む
γ-GTPは一つだけで原因を決められる数値ではありません。肝臓に関係する項目だけでもAST、ALT、ALPなどがあり、さらに中性脂肪や血糖、赤血球の大きさ(MCV)などを合わせて見ることで、考えられる方向が絞られてきます。よく見られる組み合わせの例を挙げます。
| 組み合わせ | 考えられることの一例 |
|---|---|
| γ-GTPが高め、ASTがALTより高め、MCVが大きめ | 飲酒の影響の可能性 |
| γ-GTPが高め、ALTがASTより高め、中性脂肪や血糖も高め | 肝臓に脂肪がたまっている可能性 |
| γ-GTPとALPがそろって高い | 胆汁の流れが滞っている可能性 |
| γ-GTPだけが高く、ほかはおおむね範囲内 | 服用中の薬、飲酒、体重・腹囲の増加に伴う脂肪肝などの可能性 |
この表はあくまで読み方の一例で、当てはまるからといって原因が決まるわけではありません。ASTがALTより高い形は、原因を問わず肝臓の線維化(硬くなる変化)が進んだときにも見られ、MCVが大きくなるのはビタミンB12や葉酸の不足などでも起こります。お酒をほとんど飲まないのに1行目の組み合わせに当てはまる場合は、医療機関で相談してください。ほかの組み合わせも、医療機関で相談するときの材料として役立ててください。
日常で見直せること
全部を一度に変える必要はありません。一つ選んで続けてみるだけでも、次の検査で比べる材料になります。
お酒は純アルコール量でつかむ
飲む習慣がある人は、量を数字でつかむと分かりやすくなります。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、純アルコール量(g)を「飲んだ量(ml)×度数/100×0.8」で求める方法が示されています。ビール500 ml(5%)なら約20 gです。同じ資料では、1日あたり男性40 g以上、女性20 g以上が生活習慣病のリスクを高める量として挙げられています。ただし、これは「ここまでなら飲んでよい量」という意味ではありません。お酒を控える日を作り、間を空けて測り直すと、飲酒との関係が見えやすくなります。
飲まない人は体重・腹囲と食事を振り返る
お酒を飲まない人で高い場合は、体重や腹囲の変化、甘い飲み物や間食、夜遅い食事、体を動かす量を振り返ってみてください。厚生労働省の健診プログラムでも、脂肪肝が疑われる場合には、糖分や脂質の摂り過ぎを控え、適度な運動を心がけるよう勧めています。無理な制限より、続けられる形を探すほうが現実的です。
薬とサプリメントを書き出す
服用中の薬、サプリメント、健康食品を一覧にしておくと、医療機関で相談するときに役立ちます。処方薬は自己判断でやめず、気になる点は主治医や薬剤師に相談してください。
同じ条件で測り直す
γ-GTPは数日で大きく動く数値ではありません。生活を見直したら、1〜3ヶ月ほど空けて、できるだけ同じ条件(前日の飲酒を控えるなど)で測り直し、前回と比べてみてください。
気になるときは
γ-GTPが101 U/L以上(特定健診の受診勧奨判定値)のとき、ASTやALT、ALPなどほかの肝臓の項目も一緒に高いとき、生活を見直しても高い状態が続くときは、医療機関で相談してください。医療機関では、超音波検査やウイルスの検査など、血液のγ-GTPだけでは分からない検査も組み合わせて、肝臓や胆道の状態を調べます。
皮膚や白目が黄色く見える、尿の色が濃い、便の色が白っぽい、体がかゆい、右の上腹部が痛むといった症状があるときは、数値にかかわらず早めに受診してください。特に発熱や寒気を伴うときは、すぐに医療機関を受診してください。すでに通院している人は、検査結果を主治医と一緒に確認し、薬や方針を自分の判断で変えないようにしてください。