血液検査の「溶血」とは|よくある原因と再検査、体内の溶血との違い

文:中原 秀一郎(精密栄養カウンセラー)2026年10月25日

血液検査の結果に「溶血」と書かれていたら、多くの場合は、採血したあとの試験管の中で赤血球が壊れた「検体溶血」です。検体溶血そのものは体の異常を示すものではありませんが、カリウムやLDH、ASTが実際より高く出ることがあるため、再検査(採血のやり直し)を勧められることがあります。これとは別に、体の中で赤血球が早く壊れる「体内の溶血」もあり、数は少ないものの、結果の「溶血」がこちらを映していることもあります。

溶血とは、赤血球が壊れて中身が外に出ること

赤血球は、酸素を全身に運ぶ細胞です。寿命はおよそ120日で、古くなった赤血球は、主に脾臓や肝臓のマクロファージ(古い細胞などを取り込んで処理する細胞)に取り込まれて壊されます。ヘモグロビンのうち、ヘムの部分は分解されて間接ビリルビンになり、肝臓で処理されます。鉄は取り出されて、新しい赤血球を作るときに再利用されます。ここまでは、毎日起きている通常の入れ替わりです。

溶血は、赤血球の膜が壊れて、ヘモグロビンやカリウム、酵素などの中身が外に出ることを指します。検査の場面でこの言葉が出てくるのは、次の2つです。

  • 検体溶血:採血してから測定するまでの間に、試験管の中で赤血球が壊れたもの
  • 体内の溶血:体の中で、赤血球が普段より早いペースで壊れているもの

健診や人間ドックの結果に付く「溶血」のコメントは、ほとんどが前者です。この2つを分けて考えることが、溶血という言葉を読むときの出発点になります。

検査結果の「溶血」は、まず検体溶血を考える

検体溶血は珍しくない

検体溶血は、検査室に届く検体の不具合のうち、最も多い原因として知られています。多いところでは日常の検体の3.3%に及ぶという報告があり、救急外来の検体ではさらに多いとされます。

原因の多くは、採血とその後の扱いにあります。

  • 細い針や強い吸引で、赤血球に力がかかった
  • 駆血帯(腕を縛るゴム)を長く巻いていた、刺し直しなどで採血に時間がかかった
  • 採血管を強く振った
  • 遠心分離までに時間がかかった、暑さや寒さにさらされた、搬送中に揺れた

影響を受けやすい項目

赤血球の中に血清よりずっと多く含まれる成分は、試験管の中で赤血球が壊れると血清に混ざり、本来の値より高く出ます。代表的なのはカリウム、LDH、ASTで、血清鉄やマグネシウム、リンも高めに出ることがあります。反対に、ALPやナトリウムのように低めに出る項目もあります。ALTも赤血球の中に含まれますが、ASTやLDHに比べると血清との濃さの差が小さく、溶血の影響は比較的小さい項目です。また、溶血した検体は赤みを帯びるため、色で測る項目の一部では、測定そのものがずれることがあります。

再検査を勧められたら

欧州の臨床検査医学の学会連合(EFLM)の作業部会による提言では、溶血の程度を機械で数値化し、影響が小さければ結果にコメントを添え、影響が大きければ結果を出さずに採血のやり直しを求める運用が勧められています。日本での扱いは、検査機関によって異なります。

再検査を勧められたのは、その結果が体の状態をそのまま映していない可能性があるからで、病気が見つかったという意味ではありません。検体溶血が原因であれば、条件を整えて測り直すと数値は落ち着きます。

体の中で起きる溶血

体内の溶血は、赤血球の寿命が普段より短くなっている状態です。原因は様々で、生まれつきの赤血球の性質、免疫の働き、感染症や薬、心臓の人工弁などによる物理的な力が挙げられます。飲んでいる薬が気になるときも、自己判断でやめずに、処方した医師や薬剤師に相談してください。ランニングのように足裏への衝撃が繰り返しかかる運動でも、赤血球が壊れることが報告されています。

体内の溶血があるかどうか、その原因が何かを確かめるのは医療機関の役割です。

体内の溶血で動く項目

体の中で溶血が続いていると、次のような変化がそろって見られることがあります。

  • 間接ビリルビンが上がる(ヘモグロビンの分解が増えるため)
  • LDHが上がり、ASTも少し上がることがある
  • ハプトグロビン(血中に出たヘモグロビンと結び付くたんぱく質)が下がる
  • 網赤血球(できたばかりの若い赤血球)が増える(鉄やビタミンB12、葉酸が足りないときなどは、増えないこともある)
  • 赤血球を作るのが追いつかなければ、ヘモグロビンが下がる

ただし、これらの項目はどれも溶血以外の理由でも動きます。一つの数値だけで溶血と決めることはできません。

検体溶血と体内の溶血では、数値の動き方が違う

項目検体溶血体内の溶血
カリウム上がりやすい目立って変わらないことが多い
LDH・AST上がる上がる
ALT影響は小さい(強い溶血ではわずかに上がることも)ほとんど変わらない
間接ビリルビン原則として上がらない上がる
ハプトグロビンふつうは下がらない下がる
網赤血球変わらない増えることが多い
採血し直すと落ち着くことが多い同じ傾向が続く

違いが出やすいのは、ハプトグロビンとカリウム、間接ビリルビン、そして測り直したときに同じ結果が出るかどうかです。検体溶血は試験管の中の出来事なので、ハプトグロビンの低下やビリルビン・網赤血球の増加のように、体の中でしか起きない変化は伴いません。ただし、ハプトグロビンは肝臓の病気などで溶血がなくても下がることがあり、強い溶血では、測定法によってビリルビンの数字が見かけ上ずれることもあります。表は一般的な傾向をまとめたもので、どちらに当たるかを確かめるのは医療機関です。

関係する項目の基準範囲

基準範囲は施設や測定法によって異なるため、まずは手元の結果に書かれている範囲を確認してください。参考として、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲では、溶血に関係する主な項目は次のとおりです。

  • LDH(LD):124〜222 U/L
  • AST:13〜30 U/L
  • ALT:男性10〜42 U/L、女性7〜23 U/L
  • カリウム:3.6〜4.8 mmol/L
  • 総ビリルビン:0.4〜1.5 mg/dL

LDHは2020年ごろに測定法がIFCC法に変わりましたが、共用基準範囲はどちらの方法でも同じです。間接ビリルビンとハプトグロビンは共用基準範囲に含まれていないため、検査を受けた施設の基準範囲を参照します。

精密栄養学ではどう見るか

ここからは医療の基準ではなく、私が血液データを読むときの見方です。基準範囲の内か外かで終わらせず、範囲の中での偏りと、項目どうしの組み合わせを見ることを大事にしています。

ほかの項目と組み合わせて読む

まず、結果に「溶血」のコメントが付いていないかを確かめます。そのうえで、LDHとASTが基準範囲の上のほうにあるのにALTは上がっておらず、カリウムも高め、という組み合わせなら、検体溶血の可能性を考えます。ただし、カリウムが基準範囲を超えているときは検体溶血と決めつけず、医療機関で早めに測り直してもらうことが先です。

CKも高ければ、強い運動による筋肉への負担も考えます。あわせて、採血に時間がかかったか、検査の前の数日に強い運動をしていなかったかを振り返ります。JCCLSの共用基準範囲を作る調査でも、LD・CK・ASTが強い運動で上がるため、採血前3日以内の強い運動を控えるという条件が置かれていました。

一方、カリウムは落ち着いているのに、LDHと間接ビリルビンが範囲の上のほうに寄っていて、測り直してもそれが続くなら、体の中で赤血球の入れ替わりが速まっている可能性も考えます。ビタミンB12や葉酸が不足したときにも、骨髄の中で未熟な赤血球が壊れて、同じようにLDHと間接ビリルビンが上がり、MCV(赤血球の大きさ)が大きくなることがあります。このときは、ヘモグロビン、MCV、網赤血球、フェリチンもあわせて見ながら、医療機関への相談を勧めるきっかけにしています。LDHそのものの読み方はLDHのページにまとめています。

間接ビリルビンの目安と注意

私は、間接ビリルビンがおよそ0.8 mg/dLを超えてくると、ほかの項目もあわせて確かめるきっかけにしています。これは医療の基準ではなく、私の目安です。

間接ビリルビンは、溶血がなくても上がることがあります。ビリルビンを処理する働きが生まれつき控えめな体質(ジルベール症候群。人口の数%から1割ほどとされます)や、絶食の時間が長いときです。肝臓の数値や赤血球の数が落ち着いていて、ビリルビンだけが少し高い場合は、この体質の可能性もあります。この体質かどうかは、医療機関で確かめることができます。

栄養で整える前に、原因を確かめる

体の中で溶血が続いている可能性があるときは、栄養で何とかしようとする前に、医療機関で原因を確かめることを優先します。精密栄養学で関われるのは、医療機関での結果と主治医の方針を踏まえたうえで、赤血球を作る材料や、体への負担の掛け方を整える部分です。

日常で見直せること

採血の前と当日

  • 採血前の少なくとも3日間は強い運動を控え、慣れない運動のあとは1週間ほど空ける
  • 水は、制限の指示がなければ普段どおり飲む
  • 血管が細い、採血に時間がかかりやすいと分かっていれば、採血の担当者に伝える
  • 前回と比べたいときは、時間帯や食事の条件をそろえる

食事と運動

赤血球を作るには、たんぱく質、鉄、葉酸、ビタミンB12などが必要です。ビタミンE(ナッツ類や植物油、うなぎや魚卵などに多い)やビタミンC(野菜や果物に多い)も含めて、普段の食事から偏りなく取り入れることが基本になります。ただし、健康な人がこうした栄養素を多く摂ることで溶血が減るという根拠はありません。反対に、大量のビタミンCで溶血が起きたという報告もあり、点滴で使った場合や、生まれつきの体質(G6PD欠損症)がある人に多く見られます。

長い距離を走る習慣がある人は、着地の衝撃で赤血球が壊れることや、筋肉への負担でLDH・AST・CKが上がることがあると知っておくと、読み方が変わります。検査の時期と、走る量が多い時期が重なっていないかを振り返ってみてください。

気になるときは

  • 結果に「溶血のため再検査」とあれば、まずは指示どおり採血し直してください。
  • 息切れや動悸、強いだるさ、皮膚や白目が黄色っぽい、尿の色が赤褐色に濃いといった様子があるときは、検査の結果を待たずに医療機関に相談してください。
  • 採血し直しても、LDHや間接ビリルビンが高い、ヘモグロビンが低いといった結果が続くときは、結果を持って内科などで相談してください。
  • すでに医療機関にかかっている方は、主治医の方針を優先してください。

ほかのコラム

この記事は、一般的な健康情報です。医療行為(診断・治療)ではありません。検査の結果が気になるときや、治療中の方は、医療機関にご相談ください。

参考文献

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